漁船のスクリュー(プロペラ)は、船の推進力・燃費・操船性を根本から左右する重要部品です。
外観は単純ですが、その設計思想には流体力学・材料工学・船舶工学が高度に組み合わされており、漁船の用途や漁法に応じて最適化しなければ、本来の性能を引き出すことはできません。
以下では、スクリューの基本から、種類の違い、性能を決めるパラメータ、トラブル要因、最新技術まで、現場運用に役立つ形で体系的に解説します。
スクリューの基本構造と役割
スクリューは、エンジンの回転運動を水流として後方へ押し出し、その反作用によって船を前進させます。
主な構成要素
- ブレード(羽根):水を押し出す主要部分。一般には3〜4枚が漁船で標準的。
- ハブ(中心部):ブレード基部で、シャフトと接続する中心構造。
- ピッチ(Pitch):1回転で理論的に前進する距離。性能の“ギア比”を決める重要要素。
- 直径(Diameter):プロペラのサイズ。推進力と負荷に大きく影響。
漁船における主な役割
- 推進力の発生
- 操船性の向上
- 速度・燃費の最適化
- エンジン負荷の調整
漁船は積載物(漁具・氷・水・漁獲物)で重量変動が大きいため、スクリュー特性は運航コストに直結します。
スクリューの種類と用途の違い
漁法・船体規模・必要推力に応じて、最適なスクリューは大きく異なります。
固定ピッチプロペラ(Fixed Pitch Propeller:FPP)
最も広く採用される一般的なプロペラ。
特徴
- 構造が単純で信頼性が高い
- コストが安く整備性が良い
- 小型〜中型漁船に最適
留意点
- ピッチ変更ができないため、「設計段階の最適化」が非常に重要
- 負荷条件が大きく変わる漁船では、目的と実際の運用をしっかり合わせる必要がある
可変ピッチプロペラ(Controllable Pitch Propeller:CPP)
ピッチを操舵室から可変できる仕組みを持つプロペラ。
特徴
- 低速〜高速まで効率を最適化しやすい
- 網漁など微妙な速度調整が必要な用途と相性が良い
注意点
- 油圧系統など機構が複雑で高価
- 日本の沿岸漁業では「大中型の一部」で採用されている程度
デュオプロップ(二重反転プロペラ)
2つのプロペラが逆回転し、推力効率を高める方式。
長所
- 小型船でも高効率な推進力が得られる
- 直進安定性に優れる
実態
- 船外機・プレジャー用途では普及
- 漁船では採用例はあるが、まだ少数派
ノズル付きプロペラ(Kort Nozzle)
プロペラをリング状のノズルに収めて推力を上げる方式。
特徴
- 低速域の推力が大幅に向上
- 特に曳網漁船や作業船、タグボートなどで広く採用
- トロールや重作業向けに有効
スクリュー性能を左右する主要パラメータ
漁船の動き・燃費・寿命を決定付けるのが以下のパラメータです。
直径(Diameter)
- 大きい → 強い推力が得られるが、回転数が下がりやすい
- 小さい → 高回転が必要だが高速域で有利
ピッチ(Pitch)
- 理論前進距離を示す値
- 適正回転を保てる範囲では、大きいほど高速寄りの性格
- ピッチ過大はエンジン負荷増加、速度低下を招くため注意
ブレード枚数
- 多いほど推力の安定性が増し、キャビテーション抑制にも有利
- ただし抵抗増加も伴うため高速性能は低下しがち
- 漁船では「3〜4枚」が最もバランスが良い
材質
- マンガンブロンズ:耐食性・耐久性に優れ漁船の主流
- ステンレス:高強度だが高価、小型高速艇向け
- アルミ:軽量で船外機向け、漁船本船では少ない
漁船で起こりやすいスクリュートラブル
スクリューは厳しい海洋環境に晒されるため、トラブル原因を理解することが重要です。
キャビテーション(気泡破壊による損耗)
高速回転や不適切な設計・没水深・乱流によって気泡が発生し、崩壊する際に金属表面を損耗させる現象。
症状
- 振動
- 表面荒れ(ピッティング)
- 推力低下
ブレードの曲がり・欠損
流木・ロープ・網の巻き込みによる機械的損傷が典型的。
症状
- 航行時の振動
- スピード低下
- 燃費悪化
電食(ガルバニック腐食)
異種金属の電位差が海水中で反応し、プロペラが腐食する現象。
対策
- 犠牲陽極(亜鉛)の定期交換
- 船体電位の管理
- 長期係留時の電食対策
最新トレンド:高効率プロペラ技術の進化
現代の漁船では、省エネ・燃費向上のためにプロペラ技術が急速に進化しています。
高効率スクリュー(CFD最適設計)
流体解析(CFD)により形状を最適化することで、5〜15%の燃費改善例も実際に報告されています。
ハイリフトブレード
低速域の推力を増幅する設計。
曳網漁船や養殖作業船などに適した仕様。
ノズル+プロペラの複合設計
高推力を必要とする漁法に最適で、曳網漁船・作業船の定番技術として浸透中。
まとめ:漁船にとってスクリューは“性能の核心”
漁船のスクリューは、単なる回転機構ではなく、
- 推力
- 燃費
- 操船性
- エンジン寿命
といった船の根本性能に直結する最重要要素です。
用途(曳網・刺し網・延縄・遊漁など)や船体特性に合わせて最適化することで、燃費改善・作業効率向上・トラブル防止という大きなメリットが得られます。
以上、漁船のスクリューについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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